近年、健康志向を背景に薬膳に対する関心が社会的に高まっており、自然療法・自然食が注目される中で、薬膳がじわじわと世の中に広がっています。
「医食同理」に加え、「薬食同源」という言葉や、それに関連する書物もあちらこちらで目にするようになってきました。 薬膳に関する資格もいろいろ登場しています。薬膳知識が普及してくるにつれて、「薬膳師」、「薬膳アドバイザ」などという聞き慣れてない名称も定着しつつあります。
しかし、中医営養学の一部として薬膳を教えてきた私としては、喜ぶべきなのに、なぜか心配でたまらなくなります。何年も薬膳を勉強したのに、十分に応用できない、自分の言葉で薬膳を語ることができない、というのはもったいないことだと思います。 また、「健康志向料理としてのエセ薬膳」と、中医学に裏付けられた『中医営養学』(日々、いとなみ(営)、やしなう(養)ための『医学』)を混同してはなりません。
あらゆる食物には何らかの薬効/害があります。どんな料理レシピに対しても、中医学の視点からは、薬食材の組み合わせも含め、効能・害悪について意見を言うことができますし、薬膳と称するからには、それらについての十分な検討が行われなければなりません。
中国数千年歴史の中で、臨床で試行錯誤(一種の「臨床実験」)を繰り返してきた経験の積み重ねから、「ある病状XXに対しては、薬食材YYは非常に治療効果があり、一方、薬食材ZZは病状を悪化させるだけで効果がない」といった知見が理論として集大成されたものが中医学であり、中医営養学なのです。
専門家として取り組むのならば、薬膳は「中医営養学を踏まえた薬膳学」なのだと認識していただきたい。学問的な背景、つまり、中医学の基礎理論(中医診断学、中薬学、方剤学など)と「中医営養学」をしっかり理解することが何よりも大切です。中医学基礎理論があるから、中医営養学が成り立つのであり、薬膳はこの両者を実現する方法の一つに過ぎないのです。 真の薬膳に至るまでの道のりには、近道はありません。
この研究会の活動を通じて、正しい知識を正確に且つ誠実に伝えていくことを目標にし、皆さんが真の薬膳の勉強に進んでいただくお手伝いができればと祈るばかりです。
2012年7月吉日
中医営養・薬膳学研究会
代表 梁 ペイ